GQ誌で、ストライカーのキリアン・ムバッペは、リオネル・メッシとネイマールという2人のベテランスターがPSGを去ったこと、そしてクラブと代表チームの両方のレベルでより大きな責任を担わなければならないことについて語った。
GQ誌の写真撮影中のムバッペ。写真： GQ
ムバッペがGQに語った会話は、チャンピオンズリーグのグループステージでPSGがパルク・デ・プランスでニューカッスルと引き分けに終わった翌日の2023年11月に行われた。その日、チーム全体の残念なパフォーマンスの後、ムバッペはロスタイムにペナルティキックを決め、フランスのクラブに勝ち点1をもたらした。
フランス人ストライカーは動揺していなかった、あるいは動揺していたとしてもそれを表に出さなかった。彼は無地の黒いTシャツ、ゆったりとしたパステルカラーのジョーダンのトラックスーツ、そして高価な時計を身に着けて面接に現れた。 「サッカーは複雑なもので、良い経験も悪い経験もすぐに忘れてしまう」とムバッペは語った。 「常に適応し、自分自身を再発明しなければなりません。」
まだ25歳になったばかりだが、トップリーグで400試合以上出場しているムバッペにとって、試合後に多少の痛みを感じるのは普通のことだ。ASモナコで10代のスター選手として頭角を現した後、ムバッペはわずか19歳でフランス代表として2018年のワールドカップで優勝した。
彼は2017年にモナコからPSGにレンタル移籍し、2018年夏に2億1500万ドルで完全移籍し、史上最も高額な10代の選手となった。ムバッペはPSG史上最多得点者となり、遅かれ早かれ国際レベルでも同様の地位を獲得するだろう。ムバッペは通算46ゴールを記録し、フランス史上2位の得点者となり、トップはティエリ・アンリ（51）とオリヴィエ・ジルー（56）のみとなった。ムバッペはバロンドールの最終候補に選ばれた史上最年少の選手でもある。
その着実な成長の中で、ムバッペは試合前にストレッチを増やしたり、理学療法士と過ごす時間を増やしたりなど、最高の体調を維持するために必要なことを学んだ。 「目に見えない部分ですべてがつながっていて、どんな怪我からも復帰しやすくなっているんです」と彼は言う。
ムバッペは2022年ワールドカップ決勝からわずか3日後、パリのカンプ・デ・ロージュ本部にあるPSGのジムでトレーニングを行った。写真: Instagram @k.mbappe
他の多くのサッカースターとは異なり、ムバッペは仕事と私生活の間に明確な線引きをすることを好んでいる。 「自宅には設備の整ったジムがあるが、チームのトレーニングセンターでできる限り多くの時間を過ごし、遅く帰宅することになっても、そこでやらなければならないことは何でもやりたい」と25歳のストライカーは語った。 「回復は精神的なものでもあります。クラブは練習する場所であり、家はリラックスできる空間です。そこではもっとリラックスし、家族や普段はあまり会えない人たちと時間を過ごすことができます。」
2023-2024シーズンはムバッペにとって新たな転機となる。 2023年7月、リオネル・メッシはPSGを離れ、MLSのインテル・マイアミにフリー移籍した。 1ヵ月後、ネイマールは記録的な契約でサウジプロリーグのアルヒラルに移籍した。二人のスター選手がチームを去ったにもかかわらず、ムバッペはクラブレベルでのより大きな重荷と責任にも動じない。
「サッカーの歴史を形作った多くの偉大な選手たちがこの夏、欧州を去った。そして我々は新たな時代を迎えている」と、2018年ワールドカップ優勝者の同選手は、サウジアラビアへの巨額移籍の波に触れながら語った。 「これはこのスポーツのサイクルの一部であり、いつかは私も引退する番が来るでしょう。こうした変化を心配していません。ただ、自分のキャリアを続け、自分の道を歩むことだけを考えています。」
2022年10月29日、パリのパルク・デ・プランスで行われたリーグ1のPSG対トロワ戦前のネイマール、ムバッペ（中央）、リオネル・メッシ。写真： AFP
ムバッペは自分のイメージのあらゆる側面をコントロールすることを好み、世界に対して自分自身をどう表現するかを知っています。フランス人ストライカーは会話中ずっと、子供のような熱意と勝利への執着心も見せた。
「勝ちたい、可能性の限界を押し広げたい、そして偉大なことを成し遂げたいという欲求が私の中に根付いている」と彼は語った。 「ピッチ内外で受けた教育と指導のおかげで、今の自分があると思っています。選手としても、そして人間としても、成長させてくれました。忘れがちですが、サッカーをしている時は、私たちは永遠に子供なのです。プレーのレベルは変わっても、メンタリティは変わりません。情熱は何年も変わりません。」
ムバッペは、昨シーズン29ゴールを含む過去5年間リーグ1の得点王に輝いたにもかかわらず、常にさらなる総合的な活躍を望んでいる。ディディエ・デシャンコーチは生徒たちの進歩に驚いてはいない。 「ムバッペは完璧主義者で競争心が強い。常にあらゆる面でもっと上を目指し、向上心を持っている」と55歳の監督は語った。
デシャン監督によると、ヘディングはもともとムバッペの強みの一つではなかったが、このストライカーは空中能力が著しく向上しており、それは2022年カタールワールドカップでのオーストラリア戦でのゴールで実証された。 「ムバッペが決めたゴールの数は素晴らしいが、彼はまだもっと正確にゴールを決めることができる」とフランス人監督は語った。
ムバッペはトレーニングに対してもより総合的なアプローチをとっている。 「技術的な側面とは別に、左足やヘディングでより上手くプレーするには、スポーツに対する視野を広げる必要がある」と25歳のストライカーは説明した。 「6、7人のコーチの下でプレーすることで、6、7通りのやり方を学びました。様々な側面を磨き、常に進化し続けています。正しい考え方には、相手の話をよく聞き、適応する能力が必要です。」 1998年生まれのこのストライカーは、テニスのロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチ、あるいはフランスのハンドボール選手ニコラ・カラバティッチなど、他国のスター選手の話を聴くことで多くのことを学んだ。
ムバッペはフランス代表のキャプテンの地位を含む、より大きな責任を担う機会を掴み始めている。 「以前との大きな違いは、自分の個人のパフォーマンスとチームに何をもたらすことができるかに本当に注意を集中していたことだ」と彼は語った。 「キャプテンになることで、新たな、より広い視野が得られます。」
GQの取材に対し、ムバッペは次の試合に向けて回復し準備する時間が数日あると語った。試合数の増加により、こうした「ダウンタイム」の瞬間はますます稀になってきています。 2024-2025シーズンからは、チャンピオンズリーグの参加チーム数が現行の32チームから36チームに増加し、2026年ワールドカップの参加チーム数は現行の32チームから48チームに増加する。これにより、選手たちは国内の多くのトーナメントに出場し、商業的に大きな利益のある多くのプレシーズンツアーに参加しなければならなくなり、スケジュールはますます過密になります。 2023年6月に選手会連合FIFPROが発表した報告書では、試合間の回復時間が不足しているため、プロ選手の心身の健康が悪化していることが強調された。
ムバッペは、2023年3月24日にパリで行われたユーロ2024予選でオランダに4-0で勝利した際にドリブルしている。これは彼がフランス代表のキャプテンに任命されてからの初戦だった。写真： AFP
2023年11月の代表チームのトレーニングセッション後に、ヴィニシウス、エルリング・ハーランド、ガヴィ、マーカス・ラッシュフォードを含む数人の選手が負傷した。そしてムバッペは、こうした変化は選手、ファン、そしてサッカー統括団体の間の断絶が拡大していることの表れではないかと懸念している。 「個人的には、多くの試合を戦うことに反対ではないが、常に良いプレーができなくなり、ファンが期待するパフォーマンスを見せることはできないだろう」と25歳のストライカーは語った。 「説教じみたことは言いたくないが、選手、観客、サッカー関係者全員が同じ方向を向くよう、最善の解決策を一緒に考えていく必要がある」
現時点では、ムバッペはPSGでのタイトル獲得、そしてもう少し先の目標としてドイツで開催されるユーロ2024に注力している。ユーロ2021ではベスト16でスイスに敗れ残念な結果に終わったが、フランスはさらなる前進を遂げ、大会で優勝することを決意している。 「我々は大会で最も期待されているチームの一つであり、準備も自信もある」とムバッペは強調した。 「ウーゴ・ロリスやヴァランといった偉大なチャンピオン、極めて重要な選手たちを欠いているが、チームの力は損なわれていない。これは真の結束力と適応力を示している」
ムバッペが故郷パリで開催される2024年オリンピックに参加するという噂もある。 25歳のストライカーはオリンピックに出場してメダルを獲得することに熱心だが、自分だけで決断することはできないと認めている。 「人生とキャリアにおいて、もう無理をしたくない段階に達した。もし招集されたら喜んで参加したいが、もしそれが無理なら、それは全く理解できる」と彼は語った。アスリートにとってオリンピックは特別な意味を持っています。2021年の東京オリンピックに出場したいと思ったのは、全てを勝ち取り、フランスサッカーの歴史に重要な選手として名を残したいと思ったからです。
ムバッペはピッチの外でも自分自身の物語を綴るつもりであり、自身の大きな影響力をよく理解している。おそらくマンチェスター・シティのハーランドとレアル・マドリードのジュード・ベリンガムを除けば、26歳以下の選手の中でムバッペより大きな評判を持つ選手はいないだろう。しかし彼は、大手ブランドの利益のためだけではなく、自分自身の価値観のためにそれを利用したいと考えています。
このフランス人ストライカーはまた、社会問題についても躊躇なく発言し、スタンドやソーシャルメディアでの人種差別を非難し、選手の肖像権の搾取を抑制したいと考えている。 2022年初頭、ムバッペはファストフードチェーンや賭博会社と関係のあるフランス代表の宣伝写真にポーズを取ることさえ拒否した。その結果、フランスサッカー連盟（FFF）は屈し、2022年ワールドカップから肖像権契約を改訂した。
2020年、ムバッペはパリ地域の98人の若者をサポートする財団「Inspired by KM」を設立し、新たな機会に心を開くことを目指して、彼らが文化イベントやレクリエーション活動に参加できるよう支援している。 「私はいつも恩返しをし、幸運を分かち合うように教えられてきました」と彼は語った。 「今の私の地位は才能に支えられていますが、同時に、適切なタイミングで適切な人に出会えたという幸運にも恵まれました。今、その才能を後世に伝える立場になったので、できる限り次の世代を支えていきたいと思っています。」
自身の財団が資金提供した子供アカデミーの開設式に出席したムバッペ選手。写真： KMに触発されて
ムバッペは数年前に米国でナイキの広告キャンペーン中に出会ったバスケットボールのスター、レブロン・ジェームズの例を挙げた。 「レブロンはキャリアにおいて私よりもはるかに先を進んでおり、スポーツ以外での彼の活動はスポーツ界のレジェンドとしての地位を確固たるものにしている」とフランス人ストライカーは付け加えた。 「レブロンのような刺激的な人物からアドバイスを受けることで、自分の計画を微調整し、現代の若者を支援するために可能な限り効果的な独自のアプローチを構築する機会が得られます。」
ムバッペの現在のPSGとの契約が6月に終了すると、彼の進路はすぐに分岐する可能性がある。 7シーズンにわたるトロフィー獲得や記録達成、そしてストレスや失望を経験した25歳のストライカーは、再び選択を迫られることになる。PSGが初のチャンピオンズリーグ優勝を果たすという希望を抱いて残留するか、それとも他で自分の道を探すかだ。同選手は長年レアル加入の噂が絶えず、2023年夏にアル・ヒラルから7億7500万ドルの給与オファーを受けたが拒否した。
ムバッペは、フランスサッカーの希望と夢を背負っていることに加え、そのすべてを重荷として認めている。 「プレッシャーは私にマイナスの影響を与えないことを私は証明したし、ベストのパフォーマンスをするためにはプレッシャーが必要だとさえ言った」と彼は主張した。 「プレッシャーがあるからこそ、最高レベルで競争するために必要な卓越性のレベルを維持できるのです。」
翻訳： Hong Duy
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